ビデオアートプログラムB特集:ゲイリー・ヒル

ゲイリー・ヒル《URA ARU》
1985-86年
カラー、サウンド
28’00”

ゲイリー・ヒル《インシデンス・オブ・カタストロフィ》
1987-88年
カラー、サウンド
43’51”

ゲイリー・ヒルは、1970年代からビデオ・アートにおいて卓越した作品を発表しはじめ、以来主に言語やテキストと映像の関係を探求してきた作家です。本プログラムでは、「特集:ゲイリー・ヒル」として、当館コレクションから《URA ARU》(1985-86)と《インシデンス・オブ・カタストロフィ》(1987-88)という1980年代後半に制作された2作品を上映します。
《URA ARU》は、ヒルが日本での長期滞在中に撮影した作品です。本作は、日本語における聴覚に特化した回文、「音声回文」という概念に感化されて制作された作品で、録音した日本語の単語を逆再生することで、語の新しい意味を見出していきます(例えば、「IMA」を逆再生すると「AMI」と聞こえる)。また、能の演目である「葵上」の場面を編み込むことで、映像内の登場人物の行動や単語の意味と意味のあいだをつないで見る者それぞれの物語を紡ぐ、サブテキストとして機能させています。
《インシデンス・オブ・カタストロフィ》は、フランスの作家・批評家のモーリス・ブランショによる小説『謎の男トマ』に霊感を得て制作された作品です。『謎の男トマ』の中で、主人公トマはこの小説の読者であり、ブランショその人でもあります。映像の中で、トマはヒル自身によって演じられるため、この本の自己言及的な性質をよりいっそう重層化しています。冒頭のシーンでは、砂をさらって流れてゆく波と、めくられる本のページとそこに刻まれた文字が重ねられ、『謎の男トマ』を読み進めるように映像の世界へと誘われます。その後は全編にわたって、トマが自室で小説を読むシーンと、夢とも現ともつかない幻視的なシーンが交互に映し出され、『謎の男トマ』の複雑な読書経験と主人公の混濁した精神世界が見事に映像化されています。

ゲイリー・ヒル
1951年、カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。1960年代後半には溶接による彫刻作品を制作していたが、1970年初頭から実験的な映像作品に取り組みはじめ、シングル・チャンネルによるビデオ・アートと、音と映像によるインスタレーションの黎明期に、これらの分野の礎を築いた。1982年にシドニー・ビエンナーレに出品。1984年から約1年間日本に滞在し、映像制作を行うと共に、国内のビデオ・アートの公募展の審査員等も務めた。1995年にはヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞。現在はワシントン州シアトルを拠点に活動している。

上映スケジュール

本プログラムでは、2作品を以下のスケジュールで上映します。
10: 00 《インシデンス・オブ・カタストロフィ》
10: 45 《URA ARU》
11: 15 《URA ARU》
11: 45 《インシデンス・オブ・カタストロフィ》
12: 30 《URA ARU》
13: 00 《URA ARU》
13: 30 《インシデンス・オブ・カタストロフィ》
14: 15 《URA ARU》
14: 45 《URA ARU》
15: 15 《インシデンス・オブ・カタストロフィ》
16: 00 《URA ARU》
16: 30 《URA ARU》

※5月19日(日)、7月7日(日)はイベント開催のため上映をお休みします。

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