作品解説

アメリカ出身の作者は、フェミニズム・アートの先駆者として、性差や暴力、人権などの問題を、絵画を通して訴えてきました。ベトナム戦争に対しても明確に反対し、「戦争シリーズ」を制作します。男性中心の美術界で支配的であった油絵具とキャンバスの代わりに、紙に水彩という脆弱な方法をあえて用いることで、弱者が犠牲となる戦争の残忍性を暴き出します。キノコ雲とその下に散乱する犠牲者の姿は、ベトナム戦争における非人道的行為の告発であると同時に、凄まじい破壊力をもつ核兵器を手に入れた後の全世界的な恐怖を表しています。