これから

特別展
遠距離現在 Universal / Remote

2024年6月29日(土) — 9月1日(日)

ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ヒト・シュタイエル、ミロス・トラキロヴィチ《ミッション完了:ベランシージ》2019
3チャンネル・HDヴィデオ(カラー、サウンド)、展示空間(47分23秒) ノイエ・ベルリナー・クンストフェライン(n.b.k.)での展示風景
ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ヒト・シュタイエル、ミロス・トラキロヴィチの共同制作 作家蔵 Courtesy the artists; Neuer Berliner Kunstverein, Berlin; Andrew Kreps Gallery, New York; Esther Schipper, Berlin
Photo © Neuer Berliner Kunstverein (n.b.k.) / Jens Ziehe

現代美術が観測した、個人と社会の距離感
 
20世紀後半以降、人、資本、情報の移動は世界規模に広がりました。2010年代から本格化したスマートデバイスの普及とともに、オーバーツーリズム、生産コストと環境負担の途上国への転嫁、情報格差など、グローバルな移動に伴う問題を抱えたまま、私たちは2020年代を迎えました。そして、2020年に始まった国境のないパンデミックにより、人の移動が不意に停止されたものの、資本と情報の移動が止まる気配はありませんでした。かえって、資本や情報の本当の姿が見えてくるようになったと思えます。豊かさと貧しさ。強さと弱さ。私たちの世界のいびつな姿はますます露骨に、あらわになるようです。
 展覧会タイトル「遠距離現在 Universal / Remote」は、資本と情報が世界規模で移動する今世紀の状況を踏まえたものです。監視システムの過剰や精密なテクノロジーのもたらす滑稽さ、また人間の深い孤独を感じさせる作品群は、今の時代、あるいはポストコロナ時代の世界と真摯に向き合っているようにも見えます。本展は、「Pan- の規模で拡大し続ける社会」、「リモート化する個人」を軸に、このような社会的条件が形成されてきた今世紀の社会の在り方について取り組んだ8名と1組の作品をご紹介します。

出品作家

井田大介、徐冰(シュ・ビン)、トレヴァー・パグレン、ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ヒト・シュタイエル、ミロス・トラキロヴィチ、地主麻衣子、ティナ・エングホフ、チャ・ジェミン、エヴァン・ロス、木浦奈津子

井田大介《誰が為に鐘はなる》2021
ヴィデオ(ループ再生) © Daisuke Ida
Courtesy of the artist

井田大介(いだ・だいすけ)

1987年鳥取生まれ、東京在住。彫刻・映像・3DCGなどを用いて、目には見えない現状の社会の構造や、そこで生きる人々の意識や欲望を視覚化している。本展では3点の映像作品を再構成し、「飛行」「上昇」「落下」のメタファーでコロナ禍社会を捉える。

徐冰(シュ・ビン)《とんぼの眼》2017
ヴィデオ、ライブ配信サイトで公開されている監視カメラ映像からの抜き出し、81分 © Xu Bing Studio
Courtesy of the artist

徐冰(シュ・ビン)

1955年中国生まれ、ニューヨークと北京を拠点に活動。初の映像作品《とんぼの眼》(81分)は、ネット上に公開されている監視カメラ映像、約11,000時間分から編集された長編映画。
※当館地下1階ミュージアムスタジオにて1日4回上映予定。
※《とんぼの眼》予告編&メイキング映像は こちら

トレヴァー・パグレン《米国家安全保障局(NSA)が盗聴している光ファイバーケーブルの上陸地点、米国ニューヨーク州マスティックビーチ》2015
Cプリント、121.9×152.4cm © Trevor Paglen
Courtesy of the artist; Altman Siegel, San Francisco; Pace Gallery, New York

トレヴァー・パグレン

1974年アメリカ生まれ、ベルリンとニューヨークを拠点に活動。地理情報と軍事機密、マシンビジョン、監視と通信システム、AIによる自動生成イメージなどをテーマに制作。本展では〈上陸地点〉〈海底ケーブル〉〈幻覚〉の3シリーズを展開する。

ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ヒト・シュタイエル、ミロス・トラキロヴィチ《ミッション完了:ベランシージ》2019
3チャンネル・HDヴィデオ(カラー、サウンド)、展示空間(47分23秒) ノイエ・ベルリナー・クンストフェライン(n.b.k.)での展示風景
ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ヒト・シュタイエル、ミロス・トラキロヴィチの共同制作 作家蔵 Courtesy the artists; Neuer Berliner Kunstverein, Berlin; Andrew Kreps Gallery, New York; Esther Schipper, Berlin
Photo © Neuer Berliner Kunstverein (n.b.k.) / Jens Ziehe

ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ
ヒト・シュタイエル
ミロス・トラキロヴィチ

シュタイエルはデジタル技術や資本主義といった社会的条件の中のイメージの生産と消費に関する映像作品を制作。《ミッション完了:ベランシージ》は3人の共同制作による。

地主麻衣子《遠いデュエット》2016
HDヴィデオ、40分 © Maiko Jinushi
Courtesy of HAGIWARA PROJECTS

地主麻衣子(じぬし・まいこ)

1984年神奈川生まれ、東京在住。映像、インスタレーション、パフォーマンス、テキストなどを組み合わせた自らの作品を「新しい種類の文学」と呼ぶ。チリの詩人・小説家のボラーニョをめぐる《遠いデュエット》(40分)は5章からなる映像作品。

ティナ・エングホフ《心当たりあるご親族へ――男性、1954年生まれ、自宅にて死去、2003年2月14日発見》2004
アーカイバルピグメントプリント、120×160×5cm
© Tina Enghoff
Courtesy of the artist

ティナ・エングホフ

1957年デンマーク生まれ、コペンハーゲン在住。福祉国家の構造的暴力といった社会問題に焦点を当てたプロジェクトに取り組む。日本初公開となる本展では、代表作〈心当たりあるご親族へ〉で都市に存在する孤独を問う。

チャ・ジェミン《迷宮とクロマキー》2013
シングルチャンネル・HDヴィデオ(カラー、サウンド)、15分 © Jeamin Cha
Courtesy of the artist

チャ・ジェミン

1986年韓国生まれ、ソウル在住。日本初紹介。映像作品《迷宮とクロマキー》では、「ネット強国」を自負する韓国社会の片隅で、インフラを作る作業者の姿から、大量の情報を支える個人の労働が浮かび上がる。

エヴァン・ロス《あなたが生まれてから》2023
壁紙、サイズ可変
展示風景:「あなたが生まれてから」ジャクソンビル現代美術館、2019 © Evan Roth
Courtesy of the MOCA Jacksonville. Photo by Doug Eng

エヴァン・ロス

1978年アメリカ生まれ、ベルリンを拠点に活動。制作にハッキングの概念を持ち込む。コンピューターのキャッシュに蓄積された画像を用いたインスタレーション《あなたが生まれてから》は、本人も知り得ない自画像を写す。

木浦奈津子《こうえん》2021
油彩・キャンバス、97×145.5cm © Natsuko Kiura
Courtesy of the artist. Photo © EUREKA

木浦奈津子

1985年鹿児島生まれ、在住。一貫して風景、特に日常の景色を独自の距離感で見つめ、描き続ける。本展では、新作を含む大小様々な絵画を構成することで、新たな風景を広げる。

関連動画

徐冰(シュ・ビン)《とんぼの眼》2017 予告編
徐冰(シュ・ビン)《とんぼの眼》2017 メイキング

展覧会タイトルについて

本展は、日に日に忘却の彼方へ遠ざかる 、ほんの少し前の3年間のパンデミックの時期を、現代美術を通して振り返る展覧会である。
今の時代を生きる私たちにとって、「遠さ」を感じることは、困難である。だが、その地理的な「遠さ」は決して打ち消すことはできない。コロナ禍では2メートルという距離が設定されたが、それは「飛沫が届かない遠さ」を確保するためだった。あるいは、入国制限や渡航禁止によって、国家間の「遠さ」が露呈した。停滞した物流は、地球に住む私たちに「遠さ」の認識を改めて突きつけた。ふだんは見えなかっただけ、意識にのぼらなかっただけで、もともと「遠かった」ことをこのパンデミックの時に認識したのだった。リモートワークの定着によって「遠さ」を隠蔽、解消することに成功はしたし、コロナが沈静化すると、早くも「遠さ」の感覚を我々は忘れてしまった。
タイトル「遠距離現在 Universal / Remote」は、常に遠くあり続ける現在を忘れないために造語された。本来は万能リモコンを意味するUniversal Remoteを、スラッシュで分断することで、その「万能性」にくさびを打ち、ユニバーサル(世界)とリモート(遠隔、非対面)を露呈させる。コロナ禍を経て私たちが認識した「遠さ」の感覚、また、今なお遠くにそれぞれが生きていることを認識するのは重要なのではないかという思いが、この題名に込められている。

井田大介《イカロス》2021
© Daisuke Ida
Courtesy of the artist

徐冰(シュ・ビン)《とんぼの眼》2017 ©️Xu Bing Stuio
Courtesy of the artist

トレヴァー・パグレン《軍人のいない戦争(コーパス:目の機械)敵対的に進化した幻覚》2017年 © Trevor Paglen
Courtesy of the artist; Altman Siegel, San Francisco; Pace Gallery, New York

《ミッション完了:ベランシージ》2019、ジョルジ・ガゴ・ガゴシツェ、ヒト・シュタイエル、ミロス・トラキロヴィチの共同制作
展示風景:「ヒト・シュタイエル」ノイエ・ベルリナー・クンストフェライン(n.b.k.)、2019
Courtesy of the artists; Neuer Berliner Kunstverein, Berlin; Andrew Kreps Gallery, New York; Esther Schipper, Berlin. Photo © Neuer Berliner Kunstverein (n.b.k.) / Jens Ziehe

地主麻衣子《遠いデュエット》2016 © Maiko Jinushi
Courtesy of HAGIWARA PROJECTS

ティナ・エングホフ《心当たりあるご親族へ――男性、1922年生まれ、自宅にて死去、2003年5月23日発見》2004 © Tina Enghoff
Courtesy of the artist

チャ・ジェミン《迷宮とクロマキー》2013 © Jeamin Cha
Courtesy of the artist

エヴァン・ロス《あなたが生まれてから》2023、展示風景:「あなたが生まれてから」ジャクソンビル現代美術館、2019 © Evan Roth
Courtesy of the MOCA Jacksonville. Photo by Doug Eng

木浦奈津子《無題》2021
© Natsuko Kiura
Courtesy of the artist

基本情報

会期
2024年6月29日(土) — 9月1日(日)
開館時間
10:00–17:00

※入場は閉館の30分前まで

会場
広島市現代美術館 B展示室、地下1階ミュージアムスタジオ
アクセス
休館日
月曜日(ただし7/15、8/12は開館)、7/16(火)、8/13(火)
観覧料
一般1,300円 (1,000円)、大学生950円 (750円)、高校生・65歳以上650円 (500円)、中学生以下無料
※( )内は前売り及び30名以上の団体料金

【前売券】
オンラインショップ「339」
チケットぴあ〈Pコード 686-868〉
※販売は2024年3月30日(土)から6月28日(金)まで
※広島市現代美術館の受付でも販売しています
主催
広島市現代美術館
後援
広島県、広島市教育委員会、中国新聞社、朝日新聞広島総局、毎日新聞広島支局、 読売新聞広島総局、NHK広島放送局、中国放送、テレビ新広島、広島テレビ、 広島ホームテレビ、広島エフエム放送、尾道エフエム放送
企画協力
国立新美術館

展覧会カタログ

価格|1,500円(税込)
仕様|B5判、141ページ
言語|日英バイリンガル
デザイン|村尾雄太
編集|浅見旬、尹 志慧
発行|国立新美術館



目次

[エッセイ]
遠距離現在  尹 志慧

作品リスト

[対談]
イメージの自律性、つまりイメージが人を殺すことは知っていたが、今やその指は引き金にかけられた
ヒト・シュタイエル、トレヴァー・パグレン

[インタビュー]
アートがもたらす変化  ティナ・エングホフ

作家略歴、参考文献

[掌編]
福永 信『遠距離現在』

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