1995年は、第二次世界大戦終結50周年であるとともに、広島、長崎にとって被爆50周年を迎える年です。広島は原子爆弾により一瞬にして壊滅状態に追い込まれましたが、今日みごとに再生し、平和を享受しているかに見えます。しかし、「ヒロシマ」の問題は今もなお終わってはいません。原爆投下以降、ビキニやチェルノブイリ、繰り返される核実験などが証言するように戦争時のみならず、核は現代においても私たちの生活と深く関わりあい、より普遍的な問題となって人類の生に暗い影を投げかけています。
こうした問題を前にし、現代美術は時代を浮き彫りにしながら、人間の存在や平和に対する思いも同時に深化させ、そして「ヒロシマ」は、繰り返し多くの作家に挑ませた人類的なテーマとなりました。
本展は、被爆50周年を記念し、「ヒロシマ以後」を描いた現代美術の造形を二部構成によって展観するものです。第1部では1945年から今日に至るまでの「核」に関する作品を歴史的に展観しながら現代美術の歩みを振り返り、第2部ではメッセージ性の強い5名の招待作家が、ヒロシマをテーマにインスタレーションを構成します。
ともすれば平和への意識が希薄になるなか、現代美術を通じて「ヒロシマ」に触れる本展が、平和を希求する心とつながり、生命と創造について考察する機会となれば幸いです。
出品作家
(第1部)
サルヴァドール・ダリ、イサム・ノグチ、カレル・アペル、イヴ・クライン、ベン・シャーン、ヘンリー・ムーア、アンディ・ウォーホル、ナンシー・スペロ、クリス・バーデン、アントニ―・ゴームリー、ヨーヘン・ゲルツ、ギュンター・ユッカー、ルイ・ジャム、アンジュ・レッチァ、福井芳郎、古沢岩美、山本敬輔、増田勉、丸木位里・俊、山下菊二、鶴岡政男、池田龍雄、桂ゆき、岡本太郎、白井晟一、前田常作、土門拳、東松照明、川田喜久治、岡崎和郎、タイガー立石、磯崎新、工藤哲巳、入野忠芳、殿敷侃、たべ・けんぞう、荒木高子、河口龍夫、岡部昌生、若林奮、片瀬和夫、西雅秋、森村泰昌、ヤノベケンジ、三上晴子、山口啓介、鯉江良二、佐藤時啓、古井智
(第2部)
村岡三郎、マグダレーナ・アバカノヴィッチ、アルフレド・ジャール、インゴ・ギュンター、オノ・ヨーコ