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ゲンビ「広島ブランド」デザイン公募2018

募集期間:2018年9月21日(金)~ 11月23日(金・祝)
展覧会:2019年2月16日(土)~3月3日(日)
■ 応募総数 59件
■ 特別審査員 貞廣 一鑑、鈴木 康広、須藤 玲子

入選作品・展示風景


Jiangjie《広島の雨》貞廣一鑑賞


藤本 聖二《一(はじめ)》鈴木康広賞


熊谷 和+田代 拓也+畠山 拓也
《折り鶴のチャペル》須藤玲子賞

岩竹 俊範《Setouchi Park》観客賞


折戸 朗子《広島弁いただきます!》


坂本 龍之介
《C-plate ~広島人のためのお好み皿~》


西尾 通哲(240design)
《ひろしまは島でできている/
Hiroshima Geographical Geometry》


山田 夏穂《ギフ鳥居》

特別審査員講評


Photo: Herbie Yamaguchi

貞廣 一鑑(株式会社商業藝術 代表取締役兼社長執行役員)

広島県出身。「Make a Cinema Day あなたを上映する」をテーマに、多様な人材が個性を発揮し、相互扶助で成長できる会社組織の構築を追求する経営者。社名はコマーシャルとアートの相反する2つの共存を表している。既存文化の編集・再生を「Re_culture 文化再生」、人が集まる社交場の創造を「クロッシングビジネス」と位置づけ、公園付帯型店舗のPark South Sandwich(広島市)や、劇場跡地にEIGHT SUPPERCLUB(広島市)など、現代の新しい社交場を生み出している。レストラン、婚礼、美容など85店舗を展開。

映画『雨に唄えば』(原題:Singin' in the Rain)[1952年公開]
雨を忌み嫌うか、それとも、雨を愛し、唄い踊るのか…
広島に降る雨のイメージは、「黒い雨」など悲しい側面が多いかもしれません。広島市民としては過去を教訓にする事も大切ですが、《広島の雨》からは未来の光が見えた気がしました。素直に、この紅葉舞い踊る傘が、雨の広島に咲いている景色を想像しとても素敵だと思います。海外の方が日本的なプレゼンテーションをされたことにも好感を持ちました。
《折り鶴のチャペル》はコンセプトの堅実さと実現性の高いデザインに、人を集め広島を活性化する可能性を感じました。是非実現させたい素敵な提案です。
入選作ではありませんが《Oleander Streetlight》はコンセプトに驚きました。広島市の花、夾竹桃は、可憐な姿とは裏腹に猛毒を併せ持つこと、それこそが終戦の希望であった事を初めて知りました。相反する要素が作品の中で共存しています。
広島の象徴的なモチーフは数多くありますが、それらに左右されず、確固とした着眼点と発想で、芸術性と商業性を両立し昇華している作品を選びました。

Photo courtesy:
The Japan Foundation

鈴木 康広(アーティスト)

静岡県出身。既にあるものや見慣れた現象に新鮮な切り口を与える作品によって、ものの見方や世界のとらえ方を問いかける活動を続けている。代表作に《まばたきの葉》、《ファスナーの船》、《空気の人》など。2014年、水戸芸術館にて「鈴木康広展『近所の地球』」、2017年、箱根 彫刻の森美術館にて「鈴木康広 始まりの庭」を開催。「第1回ロンドン・デザイン・ビエンナーレ2016」に日本代表として出展。2014毎日デザイン賞受賞。平成29年度文化庁文化交流使。武蔵野美術大学准教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員。

広島で生まれ育った人から住んだことがない人まで、あるいは移住したばかりの人など、応募者の多様な視点に触れることができ、審査を通して僕自身の中にあった「広島」に拡がりをもたらしてくれました。コンペではプレゼンテーションの要とも言える資料の仕上がりが評価の軸として欠かせず、着想や考え方に引かれつつ惜しい提案もありました。広島名物をモチーフにした発想は、新たな商品や製品化を連想させて楽しいのですが、僕自身は、一瞬、「?」となってしまうような未知の「間」を持つ提案を期待しました。既に認められた広島らしさをシンボライズするのではなく、一見すると関係のないものでも、広島に在ることによって生まれる「何か」に期待を寄せてしまいます。潜在的な見えない関係性を見立てる方法やきっかけをつくることがデザインの可能性として重要なポイントだと考えているからです。このような多様な視点が交差するコンペが続くことで、「広島」のイメージや、今、広島にあるものへの向き合い方が撹拌され、思いもよらないものが生まれるきっかけになるのではないかと思います。


Photo: Kosuke Tamura

須藤 玲子(NUNOデザインディレクター)

茨城県出身。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科テキスタイル研究室助手を経て、株式会社「布」の設立に参加。現在、取締役デザインディレクター。日本の伝統的な染織技術から現代の先端技術までを駆使し、新しいテキスタイルづくりを行う。世界各地の美術館、大学で講演、展覧会を数多く行う。2008年より無印良品のファブリック企画開発に携わり、2016年よりデザインアドバイザリーボード。毎日デザイン賞、ロスコ―賞、JID部門賞等受賞。英国UCA芸術大学より名誉修士号授与。東京造形大学教授。

熊谷 和+田代 拓也+畠山 拓也 《折り鶴のチャペル》
世界中から集まる折り鶴を再加工して積み上げ、モニュメントとする提案である。
8月6日の記念日に向けて、一年ごとに新たにモニュメントを立てるということで、立て続く限り、平和への祈りが続いている。
この提案の評価のポイントは、廃棄される毎年10トン以上の世界中から集まってくる折り鶴を再利用している。
それをモニュメントとして表現している。
更には、核戦争を経験した広島市民の平和への希求の強さを表しているところと言える。
「広島ブランド」という趣旨からは、常識的には多少逸脱しているかもしれないが、紛争が絶えない現在の世界状況を踏まえると、愚直に平和を求める人の心をあえて評価したい。

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