入選作品

観客賞決定!ご投票、ありがとうございました。

来場者みなさまに、心に残った作品へ投票いただき選出される「観客賞」。
10月28日(土)から11月12日(日)まで投票を行い、このたび以下のとおり「観客賞」が決定しました。

●観客賞 濱野怜子《100》

※11月19日まで入選作品展開催中!(展覧会情報はこちら

【島敦彦賞】

HONG YUNI

《対決》

透明なラケットを手に、見えない相手と「対決」するパフォーマンス作品。ラケットは、戦後広島で平和への願いを込めて考案されたエスキーテニスから着想を得た。一見すると滑稽なその対戦姿は、現在の私たちが手にする平和の不確かさ、危うさを意識させる。

【高嶺格賞】

飯川雄大Takehiro Iikawa

《デコレータークラブプロジェクト「衝動とその周辺にあるもの」》

突如あらわれる巨大なピンク猫。空間に対してあまりに大きすぎるため、鑑賞者がSNSで伝えようにも、全貌をカメラに収めることは困難である。感動や衝動を第三者に伝えるにあたり、色や形などの外面的要素の情報がどれほど必要なのか疑問を投げかけている。

【難波祐子賞】

音で社会を変えるラボ(奥野和憲 / 滝山聖士 / 帖佐翔人)
Sound Research Institute for Future Society (Kazunori Okuno / Masashi Takiyama / Shoto Chosa)

《ウォーキングプレーヤー》

回廊に並べられたスピーカーからは、それぞれに決められた音程の音が出力され、スピーカー沿いに歩くことで音が童謡「夕日」として聞こえる。歩く速度を変えると曲のスピードも変わり、逆向きに歩くと逆再生になるなど、鑑賞者自身が再生装置となる。

 

【入選】

濱野怜子Reiko Hamano

《100》観客賞

中央に大きく彫刻された「100」は、100点をあらわす絵文字を引用したもの。素材のコンクリートは、「100」が持つ強固な揺るぎなさを強調するとともに、地面から高くなるにつれて自然石、タイル、アルミへと現代的な素材に変化する美術館の建築とも調和している。


堀内悠希Yuuki Horiuchi

《よわいピストル》

ピストル型に切り抜かれた大きな布が、ひらひらとたなびく。武器の象徴としてのピストルを弱々しく表現することで、武器や核兵器保有に関する無数の噂や報道の不確実性を想起させる一方、どこかで実在するそれらに対する私たちのリアリティの欠如を揶揄している。

 


松田るみRumi Matsuda

《ビュートレス−美術館のうちとそと−》

タイトルの「ビュートレス」は、風景(view)となぞる(trace)をつなげた造語。来場者とともに、内側と外側からみえる風景を美術館の窓になぞるワークショップを行い、制作される。複数の視点が重なり合って生まれた線は、自分には見えているもの、見えていないものを気づかせる。

 


ユアサエボシEbosi Yuasa

《GHQ PORTRAITS》

「瓦に描かれた進駐軍の似顔絵が、70年ぶりに発見された」との設定に基づく作品。架空の新聞記事が伝える細部までつくりこまれた物語や、100年以上前に作られた古瓦の使用によって、あたかも実際の出来事かのように感じさせる。


CHIE

《FOPPISH GIRL −共鳴−》

ふわりとゆれる和紙の上や美術館の壁面を、紙袋をかぶった小さな女の子「FOPPISH GIRL」たちが自由奔放に動き回る。作家の分身である彼女たちは、顔を隠すことで恥ずかしいことも残酷なこともやってのける。愛らしさと凶暴性が共存した作品となっている。


【オリエンタルホテル広島賞】

該当作品はありません。

特別審査員・講評


Photo: Nohagi Naka

島 敦彦(金沢21世紀美術館館長)

1956年富山県生まれ。1980年早稲田大学理工学部金属工学科卒業後、富山県立近代美術館、国立国際美術館、愛知県美術館を経て、2017年4月より現職。これまで、榎倉康二、内藤礼、安齊重男、小林孝亘、O JUN、畠山直哉、オノデラユキらの個展を手がけたほか、2010年には「絵画の庭-ゼロ年代日本の地平から」、2013-14年には「あなたの肖像―工藤哲巳回顧展」を担当。現代美術の動向を絶えず注視しつつ、近年は、舞台やダンス・パフォーマンスにもできるだけ足を運ぶようにしている。

今回審査に初めて関わったが、応募作に、できあいの絵画や彫刻はなく、インスタレーション、映像、写真、パフォーマンス、さらに参加型の作品まで実に多彩な内容で驚かされた。広島の歴史や原爆にまつわる作品はもとより、さまざまなリサーチ・ベースの作品があり、近年の現代美術の縮図を見るようだった。展示室以外のスペースをどう活用するのか、作品内容とそれにふさわしい展示場所との関係も考慮に入れて、展覧会全体のバランスを見ながら審査を行ったつもりだが、同一の場所での展示作品の審査がなかなか難しかった。

高嶺 格(美術作家、秋田公立美術大学准教授)

1968年鹿児島県生まれ。京都市立芸術大学工芸科卒業、岐阜県立国際情報科学アカデミー(IAMAS)修了。1990年代初頭よりパフォーマンスを開始し、ダムタイプの活動にも加わる。平面、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど多様な表現手法に取り組み、社会的規範や権力構造について、アイロニーとユーモアを交えた視点で捉え直す。近年の主な個展に「高嶺格のクールジャパン」(水戸芸術館、2012年)、「ジャパンシンドローム・ユトレヒトバージョン」(Casco、オランダ、2013年)など。

全体の感想として、現在「ヒロシマ」を作品の文脈とすることの難しさを感じた。実際には、隣国の核実験が続く中、ヒロシマの象徴としての重要性は増しているはずである。しかし現実には、核兵器禁止条約交渉に日本が参加しなかったことなど、ヒロシマは文脈としてどんどん骨抜きにされており、応募者の葛藤も想像に難くない。とは言え広島をテーマとした作品にも意欲的なものがあった。
榎木陽子の町医者を通じた偶然の原爆とのつながりは、強く身体性を伴った記憶として刺激的であり、ユアサエボシの架空の進駐軍物語は、時空を超えて感情を揺さぶる可能性を感じる。また塩野太朗の陶作品は、広島の現在をシニシズムに陥ることなく可視化したものと捉えることができる。個人的には、音で社会を変えるラボの開かれた音楽鑑賞の方法、飯川雄大のささやかだがメディアに飲み込まれないためのユーモラスな提案に、本来的なアート魂を感じた。


Photo: Kenichi Aikawa

難波 祐子(現代美術キュレーション)

東京都現代美術館学芸員を経て、展覧会などの企画運営をおこなうI plus Nを設立。2016年より国際交流基金文化事業部企画役(美術担当)。 著書に『現代美術キュレーター・ハンドブック』、『現代美術キュレーターという仕事』(ともに青弓社)、 企画した主な展覧会に「こどものにわ」(東京都現代美術館、2010年)、「呼吸する環礁 — モルディブ・日本現代美術展」(モルディブ国立美術館、マレ、2012年)など。札幌国際芸術祭2014プロジェクト・マネージャー(学芸担当)、ヨコハマ・パラトリエンナーレ2014キュレーター、「"TOKYO"−見えない都市を見せる」共同キュレーター(東京都現代美術館、2015年)。 

今回の審査では、まずお題である展示室以外の空間と作品とが、互いに魅力を引き出し合う可能性をもつプランであるかどうかに重きを置いた。よって作品自体は魅力的だが、展示場所の選定に必然性を感じられないもの、逆に展示場所や展示方法については説得力があるが、作品自体に力が感じられないものについては、残念ながら選からもれた。一方で、広島を主題にしたプランも数多くあったが、私自身が広島出身であることもあり、安易にヒロシマを作品化しているものについては、共感を覚えることができなかった。特別審査員賞に選んだ、音で社会を変えるラボの「ウォーキングプレーヤー」は、「音」と「歩行」というシンプルな構成ながら、来館者が自らの身体を動かすことで、回廊空間とリアルタイムで生まれる作品の常に変化する音風景を気軽に楽しみながら鑑賞できる作品となることが期待される、明快なパワーを感じるプランであった。欲を言えば、例えばスピーカーの台数を増やして、階段部分など館の別の空間にも展開できれば、よりダイナミックで広がりのある作品になったかと思う。

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