メインコンテンツ

Vol.4 制作ドキュメント・後編

烏帽子折、そして仮面の制作へ

3月の来日で入念なリサーチを終えたサイモンは、仮面劇の登場人物を固めるうち、能の演目「烏帽子折」に着目しました。

「烏帽子折」は、牛若丸(源義経)が、平家の追っ手から逃れるため烏帽子を手にする場面に始まり、行動をともにした金売の吉次を襲う盗賊との対決までを描いた活劇です。烏帽子を冠る事で身を隠し、過去から逃れようとする牛若丸の運命と、ヘンリー・ムーアの作品《アトム・ピース》の運命とを重ね合わせたサイモンは、ムーアとその作品を取り巻く人物の繋がりを表現する装置として、「烏帽子折」を使用したいと考えたのです。

それぞれの登場人物と配役が決まり構想を固めたサイモンは、3月にアトリエを訪問した能面打の見市泰男さんに面の制作を依頼、やり取りを開始しました。スケッチやモックアップの制作を積み重ね、6つの面を制作。加えて2点のブロンズ製と帽子を1点含む9つの面が完成しました。その過程で、面が制作され命が宿る瞬間を映像におさめたいと考えたサイモンは、再来日しドキュメンタリー映画の撮影することを決意したのでした。



ムーアのスケッチ
Drawing: Simon Starling

再来日、面制作のドキュメンタリー映画を撮影

夏も過ぎた9月の終わり、プロデューサーのアネッテとカメラマンのクリストフをベルリンからを引き連れ再来日。前回の滞在ですっかり日本に馴染んだサイモンは、駅蕎麦で巧みに箸を使いこなし昼食を平らげると、再び見市さんのアトリエへと向かいました。

今回の撮影は、なんとデジタルではなく16mmフィルム! 続々と運び込まれる、フィルムカメラ、大型照明、音響機器の数々。閑静な住宅街の一角が、一気に本格的なロケ現場へと早変わりしました。 見市さんの協力のもと、面が制作されるプロセスをひとつひとつ丁寧に、3日間かけてじっくりと撮影。撮影したフィルムはすぐに現像所へ運ばれ、最終日にクルー皆で仕上がりをチェック。無事に写しだされた映像を見たサイモンも、ほっと一安心の様子でした。

こうして出来上がった9つの面と、1つの映像作品。膨大なリサーチと期間を費やした新作プロジェクト、今回、4回に渡りドキュメントに掲載されているのは、ごくごく一部。その全貌は、ぜひ展覧会でお楽しみください!



見市さんのアトリエにて撮影中


現像所にて笑顔のサイモン