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Vol.3 制作ドキュメント・中編

仮面を尋ねて西へ東へ

ムーアの調査を続けながら、サイモンはムーアを取り巻くさまざまな人々との関係が、核の開発競争に向かった冷戦構造とリンクしていく事を見つけていきます。政治と美術を巡るさまざまな「顔」を結びつけながら、これを仮面劇に仕上げる構想が浮かびました。

仮面劇といえば日本にはそれを代表する能があります。そこで、能面を作っている方にお会いしてみようと探していたところ、快く申し出を受けてくださった能面打の見市泰男さんを、3月28日大阪のアトリエにうかがうことにしました。見市さんは能面の制作、修復をなさっているほか、国内外に所蔵されている能面の研究をなさっています。アトリエは摂津市の見市さんのご自宅の2階。一般の住宅街にあるお宅で、面が命を宿し生み出されているとは。面にシャッターを向けるサイモンの気持ちの高ぶりが見て取れるようでした。

源氏と平家の史事に基づくお話を、舞台にかけてアレゴリーを含んだ表現へと変容させたお能。ムーアを取り巻く史実を能の舞台の趣向を引用し、美術を通じた表現へと変成していけないか、構想は徐々に具体化していきました。



見市さんのアトリエにて撮影
Photo: Simon Starling

大阪の後は東京へ。美術家で、古美術にも造詣が大変深く、ブレゲンツ(スイス)、DIAアートセンター(NY)、森美術館では自身の写真作品を背景にした能舞台をつくった杉本博司さんにお会いしに向かいました。能を繋ぐリンクでは、アイルランドの詩人・劇作家のW.B.イェーツがフェノロサの英訳した謡本に影響を受け、なかでも詩劇『At the Hawkユs Well(鷹の泉にて)』は能の影響を強く残していること。それが戦後日本で翻訳され『鷹姫』として完成、杉本さんの能舞台でも上演したことなど、ともて興味深いお話を伺わせていただきました。杉本さんの能についてのエッセーはぜひ展覧会カタログに掲載したい、という思いに至るサイモンでした。



ムーアを巡る人物たちをつなげるサイモンの構想図