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Vol.2 制作ドキュメント・前編

ムーア作品、湖の底へ!?

広島現美でヘンリー・ムーアの《アトム・ピース》と対面したサイモン、ムーアへ関心を抱いたきっかけは、2005年にカナダ・トロントで予定していた展覧会でした。

この街には900点に及ぶ世界最大数のムーア作品を持つオンタリオ美術館があります。英国人作家の作品がこんなにたくさん北米の街に? サイモンのリサーチが始まりました。そしてオンタリオ美術館の所蔵品であるムーアの代表作《楯を持った兵士》の再鋳造許可をもらい、オンタリオ湖に1年半の間沈めたのです! (この新作のため展覧会の開催を2年遅らせました)するとどうでしょう。彫刻には80年代末から湖で大繁殖する、黒海からやってきたゼブラ貝がびっしりと付着。海を渡って北米に収蔵されている第一世代のグローバルアーティスト、ムーアの作品に、近年のグローバル経済がもたらした、従来の生態系を圧倒し繁殖する貝が付く。グローバルに広がる2つの要素が時空を超えて集約、視覚化されました。

現代作家としてムーアを鋭く見つめるサイモンは、2010年テート・ブリテンで行われたヘンリー・ムーア展のカタログにもアーティストステートメントを寄せています。

(右写真:《蔓延作品(貝付きムーア)》オンタリオ湖で望むパワープラント(トロント)での展示)





Art Gallery of Ontario permanent
collection Courtesy of The
Artist and Casey Kaplan Gallery,
New York

カーネル・サンダースへ会いに行く

湖にムーア彫刻を沈めたことのあるサイモン、広島作品のリサーチの過程でひとつの「伝説」を発見します。「日本には川に投げ込まれたカーネル・サンダースがいる、まるでボクのプロジェクトみたいだ」、と。そう、1985年に阪神タイガースが優勝した際、熱狂したファンが当時の主砲、ランディ・バースに(ちょっと)似ているカーネル・サンダース像を担ぎだし、胴上げの末道頓堀に投げ込んだ、という逸話です。TV番組で探しても沈んだカーネル像はいっこうに見つからず、阪神も優勝から遠ざかり、呪いとまで言われました。それが2009年、戦時中の不発弾の確認に川底調査を調査していたダイバーによって偶然24年ぶりに発見、「救出」されたのです。

アメリカとの対戦、その後のアメリカ文化の影響、戦後の日米関係様々な要素を集約したといえる水没カーネルの存在に興味を持ったサイモンは、いざ大阪へ。修復を終え、現在展示されているKFC阪神甲子園店に会いに行きました。現場では店長さんが快く展示ケースも開けてくれ、長い水中生活の痕跡を残す姿をじっくり観察。村上春樹の『海辺のカフカ』、イギリス人小説家デビッド・ミッチェルの『ナンバー9ドリーム』にも登場するカーネル・サンダース。新作の一翼を担うキャラクターとしてサイモンの構想が膨らんでいきました。



サイモン、カーネルとご対面!