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Vol.1 イントロダクション

サイモン、初来日。広島にやってくる

サイモン・スターリングが広島現美で行われるアジア地域で初めてとなる個展の準備と新作制作における調査で初来日し広島を訪れたのは2010年3月19日。まだ比治山の桜がつぼみの時期でした。現在住んでいるデンマーク、コペンハーゲンから成田、さらに羽田経由広島へ、5歳のヴィンセントくん、1歳半のアリスちゃん、キュレータの奥さんヘンリエッテさんと家族全員でやってきました。ようこそ、チーム・スターリング! コンセプチュアルアーティストとして様々な作品を国際的に発表する、シャープなアーティストも、素顔は優しく落ち着いたお父さん。スーツケースとベビーカーとカメラに三脚を細身の身体に一気に担ぎ、広島上陸です。市内のウィークリーマンションに滞在し、まず1週間の広島生活をスタート。(近くにデンマークの生んだ世界的な童話作家の名を冠した「アンデルセン」の本店を見つけ、日本のパン屋さんとデンマークの深—い関係もスタディ)。早速翌日から精力的なリサーチ活動が始まりました。

調査開始。アトム・ピースを裏まで拝見

サイモンのリサーチの目的のひとつは、当館収蔵作品であるヘンリー・ムーアの《アトム・ピース》(1964-65)の調査でした。世界に6つあるこの作品のエディション1番が開館以来、ここ広島現美にあります。英国人アーティストの先達であり、20世紀彫刻界を代表する巨匠、ヘンリー・ムーアについて関心を寄せ、作品化するプロジェクトを2000年台半ばから継続的に行っているサイモンにとって、《アトム・ピース》が広島で収蔵されていることに、来日前から大きな興味を持っていました。これまでのリサーチをふまえ、さらにムーアとその作品を巡り展開する新作プロジェクトの構想が、すでにサイモンの頭の中を駆け巡っていました。

高さは1メートル強ですが重さ1トンを超えるブロンズ製のアトム・ピース。この作品を調査のため、地下の収蔵庫からホイストのある場所に移動させ、作品に傷を付けないように毛布でぐるぐると巻いてから宙に吊り上げました。「アトム・ピースには滑車がついていた」という開館当時の学芸員の証言を確かめてみたのです。すると、ありましたありました、作品の内側に外からは見えない4つの滑車が隠れていました。滑車を受ける金属の円盤もありました。これにのせると1トンの彫刻も一人でなんとかまわすことが出来たのです。6つのエディションのうち滑車があるのはどうやら広島のものだけ。ムーアは《アトム・ピース》のベストポジションを探して、屋外彫刻の位置を100度以上変えた、というエピソードを紹介してくれたサイモンは、広島の回る《アトム・ピース》に、ムーアが位置を模索していたという確信を得たのでした。


《アトム・ピース》の裏側を撮影するサイモン

《アトム・ピース》の裏側、なんと車輪が

サイモン、語る

ヘンリー・ムーアと《アトム・ピース》そして広島がどのように結びついて作品となっていくか、3月22日、サイモンはこれまでの代表作の制作プロセスについて、新作プロジェクトの構想について、急きょ開催したトークイベントで話をしてくれました。「僕は形を作らない」というサイモン。リサーチを通して歴史の糸を手繰り、様々なエピソードや史実から「ある形」に至った理由を見つけ出していきます。プロセスを内在する壮大な構想は、どんな姿を現していくのか。その内容について、このサイトで詳しく皆さんにご紹介していきます。どうぞお楽しみに。



新作の構想について語るサイモン