内海慶一コラム Vol.3「装テン」

こんにちは。装テン鑑賞家の内海慶一です。
装テンというのは装飾テントの略。
日除け・雨除け・看板の役割を兼ねた店舗テントのことです。

装テンは日本全国、ほとんどの地域で見られるはずです。
あなたの住む町にもきっと装テンはあるでしょう。
しかしその姿をちゃんと見つめたことのある人は少ないのではないでしょうか。

私は装テンが好きで、写真に撮っては賞玩しています。
装テンには様々な形状があり、見ていて飽きません。
まったく同じ姿をした装テンは2つとないはずです。

建築鑑賞を趣味にしている方はたくさんいらっしゃいますよね。
有名な建築家がつくった建物や、明治・大正期に建てられた近代建築を
見学するためにわざわざ遠方まで足を運ぶ方は大勢います。

それに較べると装テンを熱心に鑑賞したり、話題にする人は少ないようです。
寂しい。装テンの魅力を語り合える仲間がほしい・・・
自宅の近くにある装テンを、一度足を止めて眺めてほしいなあ。

装テンは私たちが暮らすこの国の、日常どまんなかの風景です。
しかも何十年も前から、ほとんど印象が変わっていません。
日本の町並みのスタンダードな景観要素と言っていいでしょう。

と、語りながらすでにいろんな装テンをご覧いただいてますが、
ぜひ一点一点をじっくりご鑑賞いただければと思います。
例えば上の装テンには「底」がありますよね。ここ、鑑賞ポイントです。

本当はいろいろと細かい分類があるのですが、
きちんと説明しようとするととても分量が足りないので
今回は割愛させていただきます。これはドーム型。

ヘルメットみたいで素敵ですね。
装テンを数多く鑑賞していくうちに、あなたは気づくはずです。
装テン職人さんの飽くなき工夫の数々に。

半バウムクーヘン型。なかなか珍しい形です。
「ミレーヌ」の文字も味わい深いですね。
形状、色、模様、タイポグラフィなど、いろんな鑑賞ポイントがあります。

こういう突拍子もない形状に出会うと、やはり興奮します。
これ、かなり凝ってるんですよ。
YOB面がうっすら反っているのがお分かりでしょうか。

先ほど「珍しい」と言いましたが、珍しいにもいろいろありまして。
上の装テンもけっこう珍しいんですよ。
これを見て「お!」と思うようになれば一人前です。

ただ、私は珍しいものだけを追い求めているわけではないんです。
どんな装テンにも見どころはあるので。
こういうベーシックな装テンも、いい風味を醸し出していると思いませんか。

と言いつつまた珍しい例を1テン。
型はベーシックな立体タイプですが、なんと前方にふっくら膨らんでます。
膨らみタイプは今のところこれしか見たことがありません。

本当は別の角度から撮った写真もお見せしたいのですが・・・
角度によって見え方が変わるので、実際に装テンを鑑賞する際は
ぜひ正面、斜め、横それぞれの表情を味わってみてください。

もともとは、もっと鮮やかな色だったのでしょう。
装テンは年々色褪せ、古び、いつか破れます。
今の姿は今しか見ることができません。

模様入りであることや、補修の跡が目立つこと、
テント面に骨が一本出ている(つまり2シートに分かれている)
ことなど、見どころの多い装テンです。

半円のヒラヒラが並んでいますが、これはタレ(垂れ)と呼ばれるもので
装テンの重要な鑑賞ポイントです。タレの有無や形状に注目するだけでも、
ぐっと鑑賞に奥行きが出るはずです。

これは見つけたときびっくりしました。
多くの装テンが持っている天地方向のベクトルがなく、
まったく別のメソッドで成り立っていることが分かります。

日本の町のあちこちに自販機があるのを見て外国の方は驚くそうですが、
装テンまでついてるのを見たらどう思うんでしょうね。
海外の方にも鑑賞してほしい一枚です。

だんだんこういうのも気になり始めるので気をつけてください。

いかがでしたか。この記事を読んで
一人でも多くの装テン鑑賞家が増えることを願っています。
そしてみなさん、全国の装テン職人さんたちに盛大な拍手を。

 

内海慶一:1972年生まれ。著作家。人型ピクトグラム「ピクトさん」、店舗の装飾テント、100円均一商品など日常のさまざまなモノ・風景を観察している。著書に『ピクトさんの本』(ビー・エヌ・エヌ新社、2007年)『100均フリーダム』(ビー・エヌ・エヌ新社、2010年)がある。

内海慶一ブログ「ぬかよろこび通信」http://pictist.exblog.jp/
日本ピクトさん学会http://www.pictosan.com/


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