内海慶一コラム Vol.2「ペッ景」

住宅の軒先などにペットボトルが並んでいるのを見かけることがありますよね。
多くの場合、植木のそばに置かれています。たとえばこんなふうに。

私はこのようなペットボトルのある風景(ペッ景と呼んでいます)が好きで、
長年、写真に撮って集めています。

ほとんどのペットボトルは猫よけを目的として置かれているようです。
水の入ったペットボトルの反射を猫が嫌がるという説があるからです。
科学的な根拠はないと言われますが、私は効果の有無には興味がありません。

ペットボトルを並べる人がいて、そこに生まれる「景」がある。
私にとってはそのことが重要なのです。
さまざまなボトリングの妙、ペッ景の味わいを、どうぞご鑑賞ください。

前掲3点のペッ景はボトルがぴったり隙間なく並んでいましたが、
上のペッ景は少し間隔が空いていますね。
この「ボトルの間隔」は鑑賞ポイントの一つです。

こちらも一定の間隔をあけてリズムよく置かれています。
しかしそれより注目したいのはカラーボトルであるということ。
カラーはめったに見ることはないので見つけたときはうれしかったです。

3本置きかと思いきや、奧にもう1本あるのがお分かりでしょうか。
このような変則的なボトル間隔もあるのです。
離れたボトル同士の連携を、ペッ景用語で「響く」と言います。

ランダム置き。整然と並べられることのほうが多い
ペッ景界においては異端派と言えるでしょう。
しかしじっと見ていると、まるで舞台に立つ役者のように
それぞれがしかるべき位置にいるような気もしてきます。

ブロックの穴に入れられたボトルたち。
ちょうど入ることに気づいたんですね。
ボトルがほとんど見えなくなることについて
設置者の中でどう折り合いをつけているのか気になります。

いいコンポジションですよねえ。
右上と左下にほぼ同数ずつ置かれたボトル。響き合ってます。
キャップの色もいいアクセントになってますね。

室外機の上という珍しい設置場所です。
間隔は空けず、ピシッときれいに揃えられてますね。
地面にはまったく置いていないという点も含めて味わい深いです。

シャッターの両側に設置されたボトル。
まるで本殿を守る狛犬のようです。
片側がラベルありで片側がラベルなしなのは、
やはり阿吽のようなものでしょうか。

二本置き。
主張せず、脇にそっと添えるだけの慎ましいボトリングです。
本数が少なくなるとだんだん「お守りっぽさ」が滲み出てきます。

一本置き。潔いです。
こうなるともう反射効果うんぬんではなく、
結界石のような役割を担わされているのではないでしょうか。

こちらも一本置き。
一緒に置かれた石が独特の景を醸し出してますね。
なんだか祭壇のようにも思えてきます。

電柱の根元に設置されたペットボトル。
ときどき見かけるパターンなのですが、
きっと犬を散歩させる飼い主に対するメッセージなのでしょう。

さて、これまで紹介したものはすべてタテ置きでしたが
ペッ景にはヨコ置きパターンもたくさんあります。
ヨコ置きの場合はボトルの間隔に加えて「向き」にも注目してみてください。

こちらはボトルの向きは揃っていますが、大きさ違いの組み合わせ。
左から大、小、小、小。動物の親子を連想しますね。

花壇のまわりに。
これはネットを押さえる「重し」の役割を兼ねています。
こういった重しタイプも一定数存在します。

タテ置きタイプにもあったシンプルな二本置き。
私はこれ、特に好きなボトリングです。
奧でもなく手前でもなく、この位置を選んだ理由がきっとあるのでしょう。
しかしそれは設置者でさえはっきりと言語化できない、
「無意識が判断した美意識」のようなものなのではないでしょうか。
私はそれがペッ景の見どころだと思っています。

最後にこちらをご覧いただいて終わりましょう。
軒下に吊された「吊りボトル」。
これは見つけたとき興奮して何枚も写真を撮ったのですが、
興奮しつつもなぜボトルを吊しているのか分かりませんでした。
いまだに分かりません。
どなたか推測できる方がいらっしゃいましたら教えてください。
または吊したご本人からのご連絡、お待ちしています。

 

内海慶一:1972年生まれ。著作家。人型ピクトグラム「ピクトさん」、店舗の装飾テント、100円均一商品など日常のさまざまなモノ・風景を観察している。著書に『ピクトさんの本』(ビー・エヌ・エヌ新社、2007年)『100均フリーダム』(ビー・エヌ・エヌ新社、2010年)がある。

内海慶一ブログ「ぬかよろこび通信」http://pictist.exblog.jp/
日本ピクトさん学会http://www.pictosan.com/


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