展覧会概要

会期
2018年9月8日(土)~11月25日(日)
開館時間
10:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日
月曜日(ただし9月17日、24日、10月8日は開館)、9月18日(火)、25日(火)、10月9日(火)
観覧料
一般1,000円(800円)、大学生700円(600円)、高校生・65歳以上500円(400円)、
中学生以下無料※11月3日(土・祝)は全館無料
※( )内は前売り及び30名以上の団体料金
主催
広島市現代美術館、中国新聞社
後援
広島県、広島市教育委員会、広島エフエム放送、
尾道エフエム放送
協力
原爆の図丸木美術館

水墨による独自の表現を探究していた広島出身の丸木位里(1901-95)と、女子美術専門学校で油彩画を学んだ北海道出身の俊(赤松俊子・1912-2000)は、1941年に結婚します。ふたりは1945年8月に原爆投下後の広島を訪れたのち、自らの体験と家族などから聞いた話をもとに《原爆の図》初期三部作である《第1部 幽霊》、《第2部 火》、《第3部 水》を制作しました。これらは報道規制が敷かれた1950年代初頭に日本全国を巡回し、いち早く人々に被爆の惨状を伝えたことで反核反戦の象徴となっていきます。《原爆の図》は、作品が担った社会的役割の大きさだけでなく、洋画家の俊による繊細な人体描写と、日本画家の位里による大胆な水墨技法が融合した表現である点においても希有な作品といえるでしょう。

本展では《原爆の図》より、初期三部作に加え、《第4部 虹》、《第5部 少年少女》とともに、《原爆の図》の需要が高まる全国巡回展中につくられた初期三部作の「再制作版」を同時にご覧いただきます。丸木位里と俊、それぞれがこれらの作品の前後に単独で制作した作品もあわせて紹介し、ふたりの画業の連続性のなかで、《原爆の図》にみられる絵画的表現の試みを読み解きます。

作家紹介

丸木位里(まるき・いり)

広島県に生まれた丸木位里(1901-95)は、表具屋や看板屋で働いた後、本格的に絵を学ぼうと21歳の時に上京。日本画家、田中頼璋に師事するも、様式化した日本画の修行になじむことはなく、帰郷します。33歳で再び上京すると、より自由な日本画を制作する落合朗風の研究所に通い、川端龍子が主宰し大画面の「会場芸術」を標榜する青龍社展に出品するなど、新たな表現の探求を始めます。同時期には、同郷の日本画家、船田玉樹や洋画家の靉光たちと広島で芸州美術協会を立ち上げ、分野の垣根を超えて絵画に向き合いました。また、この頃から墨を使った様々な技法を試みています。墨のたらしこみによる空間造形、そして日本画の技法を生かしながらも既存の枠組みから大きく逸脱した表現は、洋画家である俊との共同制作《原爆の図》においてもみてとれます。

丸木俊(まるき・とし)

北海道に生まれた丸木俊(赤松俊子・1912-2000)は幼い頃から画家を志します。17歳で上京し、女子美術専門学校(現女子美術大学)に進学。卒業後は小学校の代用教員に就くものの、画業に専念できないもどかしさから、外務省一等通訳官の子どもの家庭教師として1937年からモスクワに滞在。そして1940年、当時日本の委任統治下にあったミクロネシアへと旅立ちます。現地住民との交流のなかで描かれた数々のスケッチには、近代化しつつある暮らしの様子とともに、上半身裸の男性たちや腰蓑をつけた女性たちの姿がのびやかに表現されています。帰国後の1941年、個展訪問をきっかけに知り合った丸木位里と結婚すると、墨を用いた表現にも着手。戦中は日本による南洋統治のイデオロギーを反映させた、子ども向け絵本の挿絵を手がけ生活する一方で、鬱屈した時代の空気をまとった自画像も制作しました。

制作風景

《原爆の図》再制作版とは?

位里と俊は結婚後、東京・豊島区のアトリエ村で生活をはじめます。1945年8月6日、広島に「新型爆弾」が投下された報道を知ると、位里は家族の安否を案じて数日後に広島へ入り、俊もその後を追いました。約1ヶ月の滞在から東京へ戻ると、1948年に夫妻は神奈川県の片瀬へ移り住み、それぞれ美術展に出品するなど精力的に活動しました。

終戦から3年後、夫妻は《原爆の図》を描くことを思い立ちます。俊は「明るい日本」をつくるために暗い悲しい日本の姿を描く必要があると考え、位里もまた原爆投下を描き残すべきだと感じていました。夫妻は広島の家族らから当時の体験を聞き、互いに裸になり人体デッサンを重ね、構想を練ります。そして1950年2月、《第1部 幽霊》を《八月六日》と題して第3回日本アンデパンダン展に出品。同年8月、《第2部 火》、《第3部 水》も加わり、三部作として東京で発表され、批判と激励をともなう反響を得ます。その直後から、《原爆の図》は平和団体や学生団体の協力を得て、報道規制により原爆投下の被害が知られていない日本全国へと巡回をはじめます。1951年には《第4部 虹》、《第5部 少年少女》が完成し巡回展に加えられました。

また1950年末頃、アメリカでの《原爆の図》展示を依頼されます。俊によると、作品が紛失したときのために、夫妻と当時下宿人だった濱田善秀をふくむ四人の画家によって三部作の「再制作版」は制作されます。結局、アメリカでの展示依頼は断りますが「再制作版」は、《原爆の図》展の需要が高まるなか、日本各地で展示されることとなりました。 夫妻は米兵捕虜や朝鮮人被爆者など、原爆による異なる立場の被害者に着目しながら《原爆の図》の共同制作を1982年まで続け、全十五部作として完結させます。さらに戦争や公害問題など、人間がもたらすあらゆる惨禍へと作品の題材を広げてゆきました。

ふたつの《原爆の図》

丸木位里・俊《原爆の図 第1部 幽霊》

1950年 原爆の図丸木美術館蔵

丸木位里・俊《原爆の図 第1部 幽霊》(再制作版)

1950-51年(後年に加筆)広島市現代美術館蔵

丸木位里・俊《原爆の図 第2部 火》

1950年 原爆の図丸木美術館蔵

丸木位里・俊《原爆の図 第2部 火》(再制作版)

1950-51年(後年に加筆)広島市現代美術館蔵

丸木位里・俊《原爆の図 第3部 水》

1950年 原爆の図丸木美術館蔵

丸木位里・俊《原爆の図 第3部 水》(再制作版)

1950-51年(後年に加筆)広島市現代美術館蔵

《原爆の図》全国巡回展関連年表

1945 8月 広島と長崎に原子爆弾投下
9月 GHQによるプレス・コード発令をうけ、原爆被害に関する報道規制はじまる(1952年4月まで)
1950 2月 《原爆の図》はじめて世にでる
→日本アンデパンダン展に《八月六日》(後の《原爆の図 第1部 幽霊》)出品
10月 広島を皮切りに、《原爆の図》全国巡回展はじまる
この頃 《原爆の図》の再制作版(第1部~第3部)を制作
1952 〜7月 《原爆の図》全国巡回展:
北海道から福岡まで約100ヶ所で開催
8月 原爆の報道規制緩和
→『アサヒグラフ』に「原爆被害の初公開」特集掲載
1953 〜10月 《原爆の図》全国巡回展:
さらに全国約70ヶ所で開催

※ 全国巡回展のうち、約半数の会場で「再制作版」が展示された

関連プログラム

ゲストによるスペシャル・ギャラリートーク
2018年9月8日(土)10:30~11:30

《原爆の図》を常設展示している原爆の図丸木美術館の学芸員、
岡村幸宣氏をゲストに迎えギャラリートークを開催します。展示室入口にお集まりください。

講師:
岡村幸宣(原爆の図丸木美術館学芸員)

*申込不要、要展覧会チケット

岡村幸宣(おかむら・ゆきのり)

原爆の図丸木美術館学芸員。1974年東京生まれ。2001 年より原爆の図丸木美術館に学芸員として勤務し、丸木位里・丸木俊夫妻を中心にした社会と芸術表現との関わりについての研究、 展覧会の企画などを行っている。著書に『非核芸術案内』(岩波書店、2013年)、『《原爆の図》全国巡回』(新宿書房、2015年)、『《原爆の図》のある美術館』(岩波書店、2017年)、共著に『山本作兵衛と炭鉱の記録』(平凡社、2014年)、『「はだしのゲン」を読む』(河出書房新社、2014年)、『〈原爆〉を読む文化事典』(青弓社、2017年)など。


講演会「原爆の図」の片隅に
2018年10月6日(土)14:00~15:30

同時代の美術作品を紹介しながら、《原爆の図》以降の時代について視覚表象研究と社会史の視点から考えます。

講師:
足立 元(視覚社会史研究者/二松学舎大学専任講師)
会場:
地下1階ミュージアムスタジオ

*申込不要、要展覧会チケット(半券可)

足立 元(あだち・げん)

二松学舎大学専任講師。1977年東京生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程終了(博士)。専門は日本近現代美術史、視覚社会史。日本近現代美術史における社会思想と視覚表象の関わりを中心に研究している。著書に『前衛の遺伝子:アナキズムから戦後美術へ』(ブリュッケ、2012年)、共著に『モガ・オン・パレード 小野佐世男とその時代』(岩波書店、2012年)、『美術の日本近代史 制度・言説・造型』(東京美術、2014年)など。


ワークショップ「ガリ版刷り体験」
2018年10月14日(日)10:30~15:30(お昼休憩1時間)

戦後の教育、社会運動、文化の場で活躍した「ガリ版刷り(謄写版印刷)」を体験します。

講師:
神崎智子(版画家)
対象:
小学4年生以上
定員:
20名

*要事前申込、応募者多数の場合は抽選

ガリ版刷りとは?

簡易印刷のひとつで、孔版画の一種。原紙(ロウをひいた雁皮紙)に、鉄筆でヤスリ版の上から文字や絵をかきます。
ガリガリと音をたてて製版する様子から「ガリ版」と呼ばれ、部数の少ない出版物向けの印刷技術として親しまれてきました。

申込方法:

参加希望者の氏名(1通につき3名まで)、年齢、住所、電話番号を明記の上、下記応募フォーム、または往復はがきでご応募ください。
往復はがき宛先:〒732-0815広島市南区比治山公園1-1 広島市現代美術館「丸木位里・俊展ワークショップ」係
締切:9月28日(金)必着

応募フォーム

神崎智子(かんざき・ともこ)

版画家。1983年大阪生まれ、東京在住。2006年、京都精華大学芸術学部版画専攻を卒業後、本格的に活動を開始。謄写版の特性を生かした版画制作をメインに、国内外で作品を発表している。「謄写版の冒険」(和歌山県立近代美術館、2013年)への出展他、グループ展への参加多数。「技術ピックアップ講座 謄写版」(町田市立国際版画美術館、2015年)講師を務めるなどワークショップを各地で開催し、謄写版の普及に努める。


担当学芸員によるギャラリートーク
2018年9月29日(土)、10月20日(土)いずれも14:00~15:00

担当学芸員による展示解説です。展示室入口にお集まりください。

*申込不要、要展覧会チケット


アートナビ・ツアー
毎週土曜日、日曜日、祝日 各日11:00~および14:00~(講演会、ギャラリートーク開催時は除く)

アートナビゲーターによる展示解説です。展示室入口にお集まりください。

*申込不要、要展覧会チケット

連携企画

「丸木位里・俊−《原爆の図》をよむ」関連上映 @広島市映像文化ライブラリー

2018年10月20日(土) ①10:30~ ②14:00~

『水俣の図・物語』

水俣病をテーマにした連作で知られる土本典昭監督が、《水俣の図》の制作に取り組む丸木夫妻の姿を追います。

『水俣の図・物語』
1981年 青林舎 113分 カラー 16㎜
演出/土本典昭 撮影/瀬川順一、一之瀬正史 音楽/武満 徹 詩/石牟礼道子

会場:
広島市映像文化ライブラリー
鑑賞料:
大人380円、65歳以上180円、高校生以下無料

2018年10月21日(日) ①10:30~ ②14:00~(3作品・99分)

『原爆の図』/『ひろしまのピカ』/『HELLFIRE 劫火 -ヒロシマからの旅-』

《原爆の図》制作と全国巡回展の様子を記録した『原爆の図』、丸木俊が描いた絵本《ひろしまのピカ》を映像化した『ひろしまのピカ』、ドキュメンタリーで知られるジャン・ユンカーマン監督が丸木夫妻の創作活動と画業をたどった『HELLFIRE 劫火 -ヒロシマからの旅-』、3作品を一挙上映。

『原爆の図』
1953年 新星映画社 17分 白黒 16㎜
監督/今井 正、青山通春 撮影/浦島 進 解説/赤木蘭子

『ひろしまのピカ』
1987年 シグロ、原爆の図丸木美術館 24分 カラー DVD
演出/土本典昭 絵・文/丸木 俊 音楽/小室 等 語り/中山千夏、竹下景子

『HELLFIRE 劫火 -ヒロシマからの旅-』
1988年 シグロ(日本語版製作) 58分 カラー 16㎜
監督/ジャン・ユンカーマン

会場:
広島市映像文化ライブラリー
鑑賞料:
大人380円、65歳以上180円、高校生180円、中学生以下無料

広島市映像文化ライブラリーhttp://www.cf.city.hiroshima.jp/eizou/

広島市中区基町3-1tel. 082-223-3525

原爆の図丸木美術館主催イベント

「いのちを観る、いのちを謳う」

2018年11月18日(日)13:00~

対談「いま、《原爆の図》をどう観るか」:奈良美智(画家)×蔵屋美香(東京国立近代美術館企画課長)

トークと歌:二階堂和美(歌手)

会場:
広島平和記念資料館東館メモリアルホール
定員:
300名 有料・前売予約

イベントの詳細、お申し込みに関するお問い合わせは原爆の図丸木美術館まで。

原爆の図丸木美術館http://www.aya.or.jp/~marukimsn/

埼玉県東松山市下唐子1401tel. 0493-22-3266

展覧会カタログ

目次

  • 《原爆の図》と広島 笹野摩耶(広島市現代美術館学芸員)

図版

  • 1 - 1
    丸木俊
  • 1 - 2
    丸木位里
  • 2
    《原爆の図》と全国巡回
  • 3
    《原爆の図》をめぐる表現
  • 4
    丸木位里・俊と広島
  • 論考
    《原爆の図》再制作版についての覚書 寺口淳治(広島市現代美術館副館長)
  • 資料編
    作品・資料リスト
    年表
    主要参考文献
価格:
2,300円(税込)
頁数:
112頁
仕様:
B5/日英バイリンガル
翻訳:
クリストファー・スティヴンズ
デザイン:
野村勝久(株式会社野村デザイン制作室)、
松本恵子(k.design)
印刷:
株式会社サンニチ印刷
発行:
広島市現代美術館

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