ビデオアートプログラムA第61回:ヴァレリー・ジューヴ

上映作品について

ヴァレリー・ジューヴは人類学や社会学的関心に基づくドキュメンタリー写真を発表している作家です。本作では、交通網の発達によって次第に場所を奪われつつある都市の中の自然が対象化されています。未整備の歩道や線路脇の通路、高速道路の緑地帯といった、普段人が通ることのない場所を歩く匿名の人々は、何かを訴えるために歩いているのでもなければ、歩くことを通して土地の歴史や記憶を思い起こそうとしているのでもありません。作家がテーマとしているのは、目的を持たない動き/所有されない空間をいかにして映像化するかという美学的な問題です。しかし、作品が投げかける問いはそれだけではなく、撮影地のマルセイユ郊外は北アフリカ出身の移民が多く住む地域として知られており、映像に登場する人々も多種多様です。この地域で起きている社会的・文化的分断を想起すると、寸断された歩道は地域の分断を暗示するようにも思えます。そして、始まりも終わりもない人々の歩みの交錯は、その分断を乗り越えようとする力をも示唆しているのかもしれません。

ヴァレリー・ジューヴ

1964年フランス、サンテティエンヌ生まれ、パリ在住。1984年リヨン第2大学学士号(民族学)取得、1990年アルル国立高等写真学校学位取得。人類学や社会学的関心に基づくドキュメンタリー写真を発表している。主な個展に、2015年「抵抗する身体」ジュ・ド・ポーム国立美術館(パリ、フランス)、グループ展に2011年「フレンチ・ウィンドウ:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」森美術館(東京)がある。

上映作品

大いなる沿岸、2003年、カラー、サウンド、20′00″

follow us
facebook
twitter
YouTube
RSS

メールニュース