ビデオアートプログラムA第60回:サイモン・ロバーツ

上映作品について

壮大な自然の中で記念撮影に興じる観光客の姿が収められた本作。スイスの大自然が観光化された歴史は、17世紀イギリスで発展したグランドツアーに端を発し、19世紀には崇高な体験を求めて若者がスイスに足を踏み入れました。サイモン・ロバーツはその歴史を下敷きにしながら、社会学的な視点からスイスを捉え直そうとします。本作のタイトル「sight sacralization(眼差しの聖化)」とは、ある場所が新たに「枠づけ」られることで、観光の文脈へと高められていくプロセスに注目するための概念で、社会学者ディーン・マッカネルによって提案されました。観光とは、聖化された眼差しによって、日常から隠された真正性を求める行為であると定義づけるマッカネル。その意味ではかつての「旅行」と現代の観光に違いはありません。本作で映し出される観光客たちの姿は滑稽にも見えますが、SNSが席巻するマルチメディア時代において多様な表象を拡散する彼らこそが実は観光の「枠」を生産し続ける存在でもあるのだと気づかされます。

サイモン・ロバーツ

1974年、イギリス、ロンドン生まれ、ブライトン在住。1996年、シェフィールド大学にて人文地理学専攻、優等学位取得。2013年、英国王立写真協会より名誉フェローを授与される。風景とアイデンティティの関係性を探る作品を制作、発表。個展に2016年「New Vedute – Alternative postcards from Rome」ローマ現代美術館(ローマ、イタリア)、2018年「Merrie Albion」フラワーズギャラリー(ロンドン、イギリス)がある。また2017年「Unfamiliar familiarities: Outside Views on Switzerland」エリゼ写真美術館(ローザンヌ、スイス)、2018年「The Great British Seaside」国立海洋博物館(ロンドン、イギリス)など多数の展覧会に参加。

上映作品

《眼差しの聖化―スイスの(再)フレーム化、パート1(冬)》2016年、カラー、サウンド、3’40”
《眼差しの聖化―スイスの(再)フレーム化、パート2(夏)》2017年、カラー、サウンド、3’55”

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