ビデオアートプログラムA第55回 : イザベル・アイユール


上映作品について

本作のタイトルでもある「ソラスタルジア」は、オーストラリアの環境哲学者グレン・アルブレヒトによる造語で、慣れ親しんだ土地が気候変動や環境破壊などにより変貌してしまうことへの不安や苦痛を表します。ノスタルジアが、住み慣れた土地を離れることによって生まれる憂愁の感情である一方、ソラスタルジアは、その土地にいながらにして感じる郷愁の念です。
環境問題が今や全人類共通の課題となり、それに伴うさまざまな現象に人々は不安を抱き始めました。また急速な都市開発によってもたらされる環境の変化も人々に慣れ親しんだ風景に対する喪失感と郷愁の感情を呼び起こします。失われた風景は二度と戻ることはありません。アイユールは、そうした人々の不安や喪失感を写真や映像作品の中で扱ってきました。本作では、次第に強くなる雨、廃屋、荒れた海の映像が続いた後、穏やかな水辺で過ごす家族の情景が差し挟まれます。やがてその光景も大都市の喧騒に飲み込まれ、最後は再び雷鳴の響く雨雲の映像へと切り替わります。

イザベル・アイユール

1969年カナダ、モントリオール生まれ、ケベック州ラウド在住。2002年モントリオール大学修士号(美術)取得。環境問題や都市開発などの社会状況に対する批判的なアプローチに基づく写真や実験的な映像作品によって知られる。2014年「Shine a Light: Canadian Biennial 2014」 カナダ国立美術館(オタワ、カナダ)、2015年「The Transformation of Canadian Landscape Art: Inside & Outside of Beijing」今日美術館(北京、中国)、2016年「TILL IT’S GONE」イスタンブール・モダン(トルコ)など多数のグループ展に参加。

上映作品

《ソラスタルジア》2015年、カラー、サウンド、14’45”

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