作品解説

作者は東京美術学校卒業後、すぐに応招して満州に派遣されますが、肺の持病が悪化し、内地送還されて終戦を迎えました。その後1952年からの12年間をフランスで過ごし、画家としての地位を確立します。本作で描かれているのは広島の太田川。「ヒロシマ」をテーマとした制作委託に対して何を描けるか思いあぐねていた作者が、実際に訪れた太田川の眺めに感応し、絵筆をとりました。生まれ育った福岡県・筑豊を流れる遠賀川への郷愁もあったようです。画面上の色と線が形象をぎりぎり保ちながらダイナミックに溶けあう、この時期のスタイルを象徴する作品と言えるでしょう。