Title
枝の振動が伝わり、幹の裂ける音が聞こえ、木と木の間を軽々と、煙と炎が進んできたとしても、植物に逃げる足はなく、微塵のように灰が降っても、防ぐ手だてもありません。きっと肚にすえかねることだってあるでしょう。ためしに聴診器を幹にあててみれば、ごとごと、ごうごう空おそろしい騒音が響いている。森全体が怒っている、正直な気持ち。 木という木がいま、自分の話に耳を傾けているような錯覚がします。ひとたび地表に根をおろせば、植物は一生、住む土地を変えられないから、もっと安全な場所を見つけようなんて考えも浮かばないのです。だから羊歯の大きな葉と葉が揺れ、その間から物音が聞こえてきたとき、みんなも草の中に身をすくませたのです。木が生きている、その通りに。
Artist
岡﨑 乾二郎
Year
2004
Size
Material
Collection

作品解説

作者は、絵画、彫刻、建築、文筆活動などさまざまな領域を横断しながら幅広い活動を展開してきました。二枚で構成される本作の絵画をそれぞれ見比べると、アクリル絵具によるみずみずしい描き込みは画面を隔てて反復し、互いに呼応し合っていることに気がつきます。まるで詩のようなタイトルは、両者の間で複数の物語を平行して生成しながらも、単一の物語へと還元されることはありません。二つのキャンバスの間で、色、形、言葉といった要素が交換され、互いに関係づけられ、さらに別の新たな関係が生まれること。作者はそのような営みそのものをも造形行為と捉え、一貫した関心を寄せました。

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