作品解説

タイ出身の作者は、パリ留学を機に自国の自然に根ざした素材に目を向け、タイの伝統文化や仏教的な世界観を表現しました。帰国後はチェンマイを拠点に活動し、タイの現代アートに大きな影響を与えました。高く積み上げられた鉄製の箱と、人間の肺をかたどった真鍮の塔によって構成された本作は、仏塔を思わせる形をしています。近づくと作品に塗り込められたハーブやスパイスが放つ独特の香りに気づくでしょう。「ヒロシマ」をテーマとした制作委託を受けた作者は、肺の塔や香りによって、人びとが教会や寺院の中にいるときに感じるような精神的な癒しの空間を創造しようとしました。