作品解説

韓国出身の作者は、韓国現代美術の重要な動向である「単色画」を代表する画家の一人です。初期はフランスのアンフォルメルなどに影響を受けた抽象絵画を手掛けましたが、油絵具が持つ粘着性への違和感から、1970年代後半以降、韓国の伝統的な暮らしに根ざす韓紙を用いるようになりました。「楮」とは韓紙の原料を指し、本作では水に浸した楮の繊維が画面の色調に繊細な強弱を生み出しています。楮という素材と向き合い自身の精神との一体化を求めた試みは、作者が亡くなるまで40年にわたって続けられ、最後のシリーズである「黙考」に結実しました。